大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和43年(ワ)3430号 判決 1969年1月30日

原告 城南信用金庫

右訴訟代理人弁護士 橋本一正

被告 西村晃

右訴訟代理人弁護士 稲垣規一

主文

原告の本訴請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、申立

原告

「被告は原告に対し金六五七、九九九円およびこれに対する昭和四二年三月一三日から右支払ずみまで日歩四銭の割合の金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。」

との判決および仮執行宣言。

被告 主文同旨の判決。

第二、原告の主張

一、原告は、昭和四一年五月二五日、訴外西村竜泰(以下竜泰という)との間で手形取引契約を結び、右契約によって右訴外人が原告に対し負担する債務につき期限後の遅延損害金は日歩四銭とする旨合意した。

二、同日、被告は原告に対し、竜泰の前項の債務につき連帯保証を約した。

三、原告は、同年八月五日、竜泰に対し金一〇〇万円を、弁済期同年一一月二日と定めて手形貸付の方法で貸し渡し、右訴外人は原告に対し、金額右同額、振出地および支払地東京都千代田区、支払場所、原告信用金庫九段支店、支払期日同年一一月二日、振出日同年八月五日、名宛人原告とする約束手形一通を右債務の支払担保のため振出した。

四、主債務者竜泰は、右貸金元本中金三四二、〇〇一円と右貸金元本に対する昭和四二年三月一二日までの遅延損害金の支払をしない。

よって、原告は連帯保証人の被告に対し、残元本金六五七、九九九円とこれに対する昭和四二年三月一三日から支払ずみまで日歩四銭の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三、被告の主張

一、原告主張の一の事実は知らない。

二、同二の事実は否認する。被告の弟の竜泰が、被告の印鑑を無断で持出し使用したことがある。

三、同三の事実は知らない。

四、同四の事実は否認する。

第四、立証<省略>

理由

原告主張の二の事実は本件審理に表われたすべての証拠によってもこれを認めることはできない。

即ち、原告の右主張事実の直接証拠となりうるものに、甲一号証の一(手形取引契約書)があり、右書証の連帯保証人名下の被告の印影が被告の印章により顕出された事実は当事者間に争がないけれども、被告本人は、右印影につき被告の押捺を強く否定する供述をし、更に、証人平野輝雄の供述によると、昭和四一年五月二五日頃、訴外竜泰は、原告九段支店と手形取引契約を開始するに当り連帯保証人の差入れを求められたので、右同支店得意先係平野輝雄同席の上で被告方で被告方で被告に連帯保証を求めたが、被告は遂に承諾しないままその場を立去ったこと、その直後、右竜泰が前記のとおり被告の印章により顕出された印影のある甲一号証の一を隣室から持参したので、右平野輝雄は漫然被告の押捺したものと信じ訴外竜泰が被告の氏名を連帯保証人署名欄に記入したのちこれを前記支店に持ち帰ったが、真実被告が承諾したかは確めなかったことが認められ、右認定に反する証拠はなく、また、被告本人の供述によると、訴外竜泰は被告の印鑑を無断で被告の妻や使用人から口実を設けて借り出し使用した事がある事実が認められ、他に右認定に反する証拠はなくまた証人高橋丸雄、被告本人の各供述によると、訴外竜泰は、被告の居ない場所で、甲二ないし四号証を含めて約三〇通の借入申込書用紙や約束手形用紙に被告の印鑑を押捺した事実があることが認められ、他に右認定に反する証拠はなく、これらの諸事実と、頭書事実を強く否定する被告本人の供述とを併せ考えると、甲一号証の一の印影が被告の印章によるものであることと証人平野輝雄の供述のみで右書証の成立の真正を推認し、或いは原告の主張二の事実を認めることはできず、他に右事実を認めるに足る証拠はない。

よって、原告の本訴請求は失当として棄却する。<以下省略>。

(裁判官 野田殷稔)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例